
DRIVE (2011年/ニコラス・ウィンディング・レフン監督/アメリカ/100分)【ヒューマントラストシネマ渋谷】
約束の5分間、現場前に駐車した車の運転席で強盗犯を待つ主人公。警察無線を傍受しながら見事なハンドルさばきで追跡をかわし、スタジアムに詰めかけた観客の雑踏にまぎれ見事に犯人を逃走させる冒頭シーンから一気に引き込まれる。
かつてのB級映画のノワールな匂いを濃厚に漂わせる作品。苛烈なバイオレンス、夜の暗がりに逃げ込む犯罪者、孤独な男の純愛。愛する者を守るためにマフィアとの決死の勝負に一人きりで挑む男の物語。評判に違わず面白かった(容赦ないバイオレンス場面を直視できず視線を逸らす時間も長く、ここぞという演出を見逃しているだろうな、と思うけれど)。
主人公は自動車整備工場で働く無口な男。ハリウッド映画のカースタントの仕事を請負い、その傍ら犯罪者を現場から逃亡させる運転手としての裏の顔も持つ。同じアパートの同じフロアに幼い息子と暮らすアイリーンと出会い、2人の間に控えめに恋が始まりかけた時に、刑期を終えた彼女の夫が妻子のもとへ帰ってくる。服役中に多額の借金を負い、妻子の安全をも脅かし強盗の実行犯になることを強要されている彼の苦境を知った主人公は、自らも運転手として質屋襲撃事件に加担し、仕組まれた罠に巻き込まれてしまう。
名前も与えられていない、いつも爪楊枝を咥えている<ドライバー>の過去は明かされず。そんな謎めいた寡黙な男の、逃がせ屋としてハンドルを握る運転と、あどけない母子を乗せるドライブと、全く異なる表情を見せる画面が彼の切ない心情を語り、男が生命を賭して守ろうとする女性がファム・ファタールのイメージではなく若く美しく無防備な母親であることで、孤独な男が欲した日向の幸福と、血なまぐさい裏社会のコントラストが、ひりつくように、かつセンチメンタルに際立つ。いよいよクライマックス。2人の出会いの場所だった、再びのエレベーターの場面。狭い箱に愛する女性と命を狙う人間と乗り合わせたドライバーは、アイリーンを自分の右腕でかばうように身を寄せ初めてキスする。甘やかな陶酔の直後、凶暴な獣と化した彼は彼女の目の前で素手で男を殺す。ドライバーの着る背中にサソリの大きな刺繍入りジャケットが鮮血で汚れる。
主演のライアン・ゴズリング、アイリーン役のキャリー・マリガン、共に非常に魅力的。
L.A.のざらついた夜を掻きむしるような、あるいは抱擁するような音楽がカッコイイ。「A Real Hero」「Nightcall」「Under Your Spell」どの曲も耳から離れない。作品の鼓動を刻むインストルメンタルに緊張が高まっていく。久し振りにサントラが欲しくなった。